eyelessfish
2016.08.17_19:43


とっても美味しいクリームチーズパンがあって、
ぼくはそれを週に一回は必ず食べる。
週に一回しか行かないところに売っているから、
週に一回は必ず食べる。
出来立てを食べるのがいい。
たっぷりのクリームチーズが、
ハチミツと溶け合って、
固めのフランスパンを噛むごとに
なんだかくせになりそうな味が味わえる。
ぼくはそれを2つ買って、
1つは彼女にあげるために残しておいた。

仕事が終わって、車に乗り込むと、
途端に腹が減ってくる。
あのクリームチーズパンがあることを思い出して、
今すぐにでも食べてしまいたい気持ちになってしまう。

だめだ、これは彼女にあげるんだから。
彼女に食べてもらいたいんだから。
きっと気に入るはず。
喜んでくれるはず。

しばらくは前向きにそう思っているうちに、
運転をしながら色々なことを考える。
色々と考えているうちに、
自分の食欲を思い出してしまう。

また買ってこればいいじゃんか。
そういう考えが芽生えてしまったらもう終わり。

まるっと食べてしまった。

まるで、11ぴきのねこのあのシーンのように、
空っぽになったビニール袋がパンの形を残して、
ころんころんと冷房の風で転がっていった。



そうやって食べてしまったパンは全部で3個。
やっと渡せたパンは1個。

やっと昨日渡せました。




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2016.08.15_22:32


ぼくはスーパーアルバイターだ。
(そうやって言えば、
なんかすごいことをやっているような気がする。)
彼女のアパートで彼女と暮らしている。
収入は彼女の3分の2だ。
ローンとかローンとかローンとかで、
給料はまるっとなくなる。毎月のことだ。
家賃はいつしか払わなくなった。
少しでもぼくの貯金を増やすためだ。
彼女の計らいだ。
ぼくは彼女と同時に家を出て、
彼女よりも早く帰ってくる。
だから、掃除も洗濯も料理もする。
家事は嫌いだ。
特に洗い物と洗濯が嫌いだ。
彼女は洗濯が好きだから大抵やってくれる。
ぼくは洗い物が嫌だけど、やる。
彼女のためだからだ。
彼女はよく遊びに行く。実家にもすぐに帰れる。
ぼくは友達がいない。実家は遠い。
一人でも大丈夫?と聞かれれば、
ぼくはかならず平気。と答える。
だけど、次の日の朝起きて、
平気ではなくなっている。
彼女が今日、帰ってこないのだとということで
さみしくて仕方なくなる。
そのままの洗い物、そのままの洗濯物、
買ってきてそのままの食料品。
ぼくはその時、
物を与えられて場所を与えられて、
存在している気分になる。
お金がなくて力にはなれないから当然なのに
そういった気持ちを彼女に知らせたい衝動に駆られる。
なんで、自分だけ好きなときに好きなだけでかけて、
家事も進めないで、
ぼくがここで待っていればいいの?
全部やっておけばいいの?
さみしいときはどうしたらいいの?
そういう思いでいっぱいになる。

口に出してしまったのだ。それをついに。
あたしに何を求めてるの?
彼女の怒りは目に宿っていて、
ぼくはその目が涙で見えなくなった。


彼女のために生きればよいではないか。
少しの幸せと少しのやりがいで十分。
大きなことを成し遂げなくても、
大きなものを得なくても、
彼女のそばにいることができれば幸せではないか。
なのに、なんでぼくは抑えることができなかったのだろう。
寂しさを。


お互いが自立して収入がないと、
一緒には暮らしていけない。
同性なんだもん。
ぼくたちは結婚できない。


でも悪いのはぼく。
落ちぶれたぼくです。







ぼくは今、ただ待っています。
連絡が来ればすぐに向かうつもりで、
いつでも行けるようにスタンバイしています。
連絡がくるかどうかはわかりません。
けれど、もし、
連絡が来て目的地に行くことができれば、
得ることはたくさんあるでしょう。
その喜びというものは、
たとえ待ち続けて結局行かないということになって、
落胆し、後悔することよりも、
はるかに大きな意味があることでしょう。
だからぼくは待っています。
待ち始めて、1時間経ちました。

何度追い払っても、
助手席側の窓には蜘蛛がいます。

車の中は涼しいです。

外は暑いです。
冷房の効いた場所から外へ出た同僚が言っていました。
「まるで、異国ですね。」

いいなあ、そんなことを思えるのが。

たくさん旅をしたときのある国の空気みたいでしたか。




「まるで、口を塞がれたみたい。あつさで。」

ぼくはそう思ったんですよ。